浮草雑記帖

暮らし。からだとこころ。自然。

八幡来宮神社

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9月の初め、伊豆高原の大室山浅間神社へ磐長姫を詣でた際、せっかくここまで来たのだから他にも行く場所はないかと駅でもらった観光案内用地図を眺めていたところ、駅から歩ける距離に神社を見つけた。リュウビンタイの北限自生地とある。リュウビンタイは南方によく見られる大型のシダ植物で、一時期、観葉植物として人気が出て、私も部屋に置きたいと憧れていたことがある。子供の頃から南の気分を運んでくれる植物が好きなのだ。うちではすでにセロームを育てていたので結局リュウビンタイを迎えることはなかったが、そのときのほのかな憧れが今も続いていて、すぐにここだ!行ってみようという気になった。宿からバスで駅に向かい、駅から20分程歩いたころに八幡来宮神社の赤い鳥居が見えた。観光パンフレットに大きく紹介されているわけでもなく、住宅街を通り抜けた先にある神社なので予想通り観光客は誰もいない。しかし、鳥居の向こうには一面緑の広々とした空間と雨風に晒された白木の社務所。足を踏み入れるなり、わあ〜っ気持ちいい!と心の中で声をあげてしまった。木々の間から木漏れ日が差込み、清々しい空気が満ちている。

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来宮八幡神社は本来この地にあった八幡宮来宮神社を合祀したと伝えられている。御祭神は、八幡宮誉田別命(ほむたわけのみこと)と伊波久良和気命(いわくらわけのみこと)。もともと海辺の岩窟に祀られていた伊波久良和気命は大変お酒好きの神さまで、沖を通る船に酒の奉納を強要するため困った船人たちが沖が見えない現在地へと遍祀したとの言い伝えを知り、ならばお酒をお供えしなければならないだろうと駅で地元のカップ酒を買っておいた。

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しばしの間、お供えした後、置きっぱなしでいいのかわからずお酒は撤去したが、手前の小さなお社にはすでにお酒のお供えがあった。

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あちこち蚊にさされながらも、静かで気持ちがよくて、いつまでも佇んでいたくなるような場所だった。穴場。

hatimanguukinomiya.net

三島へ。③ 

三嶋大社を出て、駅まで歩いていく途中、街の中を流れる川がきれいで驚いた。いや、思い出したというべきか。そう、三島はきれいな水で有名な街だった。富士の伏流水が流れ込む清流の都。いまさらながら再認識した。

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町中を流れる川には鴨が泳いでいる。

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楽寿園前の白滝公園。湧水が白い滝のように流れていたことから名付けられたという。

今回は行けなかったが柿田川の湧水も有名だ。

白滝公園近くに「白滝観音堂」という小さなお堂があった。

三島を訪れる前の週に志摩の白瀧大明神で滝行体験(といっても高低差50cmにも満たない滝・・・)してきたばかりだったので、ちょっとしたシンクロを感じる。

きれいな水を見ていたら、なんだか美味しい日本酒が飲みたくなり、どこか軽く呑めるところはないかなと探しながら駅に向かったが、まだ時間も早く、女ひとりで地酒を少量呑めるような店は見当たらない。諦めて駅の売店カップ酒でも買って新幹線で飲もうかと思っていたら、駅のすぐ側のホテル内にあった干物店の一角に干物を炙りながら食べられるカウンターを見つけた。当然、日本酒もある。先客の男性軍が席を立つのを待ってカウンターに座った。メニューをみると地酒試し飲みセット!そして数種類を少量ずつ炙って食べられる干物セットもある!望みのものがズバリ差し出され、これは神様のご利益だろうかと思ってみたり。

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静岡の地酒3種を楽しめました。「正雪」が自分好みだった。

 

 

 

 

 

 

三島へ② 三嶋大社

瀧川神社を出て、今度は三島大社まで歩いた。

こうやって歩いてみると、三島は田んぼや畑が結構残っている。

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この日は午後から雨の予報であったけど、大社に向かうまでの間はなんとか降られず、

曇り空を保ってくれた。三嶋大社が見えてきたところで、雨がぽつぽつ。

三嶋大社には子供の頃から何度も来ていたはずだけど、久しぶりに来てみたらまるで初めて訪れたような気分になった。

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雨も降っているし歩き疲れていたので、ささっとお参りして済ませてしまった。

 

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土産物店兼茶屋で三嶋大社名物「福太郎」をいただきながら、休憩。

福太郎ののぼりを見て、改めて「黒い翁」であることに気づいた。

三嶋大社のサイトにあった福太郎の由来によると・・・

1月7日午後1時より、御殿にて田祭(たまつり)が斎行され、引き続き舞殿では、静岡県無形民俗文化財に指定されている「お田打ち神事」が行われます。 「お田打ち神事」の起源は古く、平安時代ともされ、鎌倉時代になると盛んに行われたと考えられています。その後、室町時代には狂言形式の芸能として調えられたと考えられます。白いお面を付けた舅(しゅうと)の穂長(ほなが)がその年の恵方(えほう)から登場し、黒いお面を付けた婿の福太郎(ふくたろう)とともに、苗代所の選定から種まき、鳥追いまでの稲作行事を狂言風に演じます。「お田打ち神事」のように、年頭に当たって、その年の五穀豊穣、天下泰平を祈る神事のことを予祝神事(よしゅくしんじ)といいます。

能の三番叟に出てくる黒色尉だ。

三番叟が好きなので、黒翁にこんなところで会えてちょっと嬉しい。

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お土産に買った「福太郎」。リーゼント頭に見えるけど、これは烏帽子をかぶった翁。

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三島へ① 瀧川神社

先週、熱海の実家に帰ったついでに三島大社へ行ってみようかと思いついた。

大昔の高校生時代、三島の学校へ通っていたので三島大社のことはよく知っているような気がしていたけれど、なにしろ30年以上も前の話なので、いちおう下調べ。

大社のことを調べているうち瀧川神社という瀬織津姫をお祀りしている神社を見つけた。駅から離れた場所にある小さな神社ながら注目を集めているらしい。三島にそんな場所があるとは全然知らなかった。ひっそりと佇む奥宮が好きなので、さっそくここにも行ってみることに。

三島駅からバスに乗り、小高い場所にある住宅街を上っていく。ところが事前に調べた最寄りバス停がいつまでたっても現れない。そのまま終点に着いてしまった。違う路線に乗ってしまったのだろうか?バスを降りてスマホの地図アプリで現在地を見てみると、瀧川神社からはだいぶ離れてしまっている。しかし歩けない距離ではなさそうだったので、神社までぼちぼちと歩くことにした。

地図に従って大きめの道路を歩いていくと突然右側の細い小道に誘導され、竹やぶの中へ。細い歩道を下っていくと今歩いてきた住宅街と全く違う、里山風景が広がっていた。

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いきなり別の世界に迷い込んだようで、なんだか胸が高鳴る。

この歩道から少し離れたところを見渡すと、小さく鳥居が見えた。あそこだ!

鳥居を目指して歩いていくと、一台の車が神社へ続く細い道を慎重に徐行していた。追い越して先へ進むと先ほどの鳥居が現れた。

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緑を背負っているような鳥居。この姿を見ただけで特別な場所という気がしてしまう。

 

御神体の瀧とお社。

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前日にこの場所をよく知る方から、川の側まで下りてみるとまた印象が大きく違いますよ、とアドバイスいただいていたので、川の近くに下りてみた。

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わずかな距離でしかないのに、たしかに水際から見ると印象が変わる。

言葉でうまく言えないのだけど、清冽な水の気を感じるというか・・・。

じーっと瀧から落ちる水を眺めていると、ときおり暖かい空気を感じたりもする。

いつまでも眺めていたい気持ちになったが、注目の瀬織津姫の神社とあって平日の午後にも関わらずひっきりなしに参拝客がやってくる。いつまでもひとり居座っているわけにもいかず、また来ますとご挨拶して神社を出た。

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